修平氏、気付く。

鼻息荒く旅に出た修平氏が目的地を見失い、渡りかけた石橋を自らの手によって破壊し、このままでは食べることもままならぬので、モツ鍋屋で働くことになってから早くも半年以上の歳月が流れた。


光陰矢の如く、瞬きをしている間に季節は流れた。


仮に、コラーゲンが人体にとって有害な物質であったなら、修平氏は致死量に達する程のコラーゲンを摂取していることになる。


それぐらい修平氏は、この半年間モツ鍋を喰った。


また、修平氏は得意の人心掌握術を駆使し、店長不在時に店長代行を務めるポストに就き、学生アルバイトの少年に何の役にも立たない阿呆な事ばかり教えて過ごした。


また、夏場には『えくすとらこーるど』という冷たい麦酒を垂れ流す新型機が導入され、人々の喉の渇きを潤した。
商売は若干繁盛した。


しかし、反比例するように修平氏のモヤモヤは蓄積されていった。


「何だか随分と軌道から外れているような感覚なのだが、これは気のせいであろうか?いや、これは気のせいとかの問題ではないだろう。明らかに軌道を外れている。例えば、奈良県に行くのに近鉄電車を使ったとして、誤って伊勢・志摩方面に向かう近鉄電車に乗ってしまっている感覚だ。いや、何も伊勢・志摩が悪い訳ではないし、モツ鍋屋が悪いという訳でもない。伊勢・志摩は素晴らしい所だし、モツ鍋は美味しい。でも、明らかに間違っている。そして間違っているのは己自身!!これは一大事!!可及的速やかにナントカせねば取り返しがつかなくなる!」


平氏は、そんなことを考えながらプリプリとしたモツを喰った。


プリプリした丸っこいモツを喰いながら、修平氏は別の事を考えた。


「たしか先週ぐらいに淡路島の海に遊びに行った気がするのだが。今年の夏も蝉の鳴き声がやかましかったというのに、いつの間にやら蝉は皆死に絶えて地面にコロコロ転がっていた。しかし、見たまえよ。今じゃギンナンが悪臭を放って御堂筋の舗道に転がっているのだから、月日の経つのは早いものだ。そして、やがて紅葉の季節を迎え、瞬く間に葉は落ち、寒々とした冬が訪れる。冬将軍が遥か北の大地から日本海を渡り、野を越え山越え谷越えて私の身に襲い掛かり、私は呆気なく風邪をひくに決まっているのだ。これで良いのか?私の2011年…つまんねえ。超つまんねえ。ハラハラドキドキなんかありゃしねえ」


平氏は時折、自らドン底状態に陥れる悪い癖がある。


そんな修平氏を友人のS見氏は心配してくれた。


「修平君、駄目!ツイッターとかmixiとかで変な呟きばかりしてちゃ、ダメ、ゼッタイ!」


見兼ねた人々は「ええかげんにしろ」とも言った。



そんな折り、修平氏に大変有り難い知らせがあったのだが、今回は詳細について述べないこととする。


ともかく、修平氏はモツ鍋屋での勤務を終え、とある場所へと向かったのである。